樹齢百年のプラタナスの木漏れ日とモダンなスモールショップが調和する静安区の「巨富長」エリアは、上海で最も若者文化の密度が高く、ファッショントレンドの発信地として常に活気に満ちた地域だ。今、このトレンドの発信地において、特定の枠組みを飛び越え、新たなムーブメントを巻き起こしているランドマークがある。それは巨鹿路812号だ。
ここは全国で初めて共青団(共産主義青年団)が直接運営するユースエコノミーのフラッグシップスペース「Lab812静安青年引力場」であると同時に、実質ゼロコスト・低リスクで挑戦できる「テストマーケティングの拠点」でもある。
2025年10月のオープン以来、Lab812は斬新なコンセプトのもと、若者たちのスモールビジネスをアイデアから市場へ、ストリートから夢の実現へと導いてきた。これは「若者に優しい街、若者が活躍できる街」をテーマとした実践的な社会実験でもある。
課題解決:実質ゼロコストの「テストマーケティング拠点」
「起業の第一歩を踏み出すのが最も難しい」。静安区共青団委員会の調査を通じて、優れたアイデアやプロダクトを持つ数多くの若者が、「多額の初期投資を伴うトライアンドエラー」を前に二の足を踏んでいる実態が明らかになった。実店舗の賃料、保証金、内装費、運営コストなどは見えない壁として立ちはだかり、若者たちが起業への一歩を踏み出すことを躊躇させる大きな要因となっていた。
同時に、「巨富長」エリアは繁華街でありながらも、空き店舗の発生やテナント業態の同質化という懸念を抱えていた。若者たちの「クリエイティビティの波」を、いかにして地域の「経済的価値」へと転換させるか。
静安区はその問いに対し、「積極的な介入と実証実験」という答えを提示した。区共青団委員会と静安寺街道は即座に連携し、街道が所有する巨鹿路812号の物件を「ユースエコノミーの実証フィールド」として開放した。施設の運営においては、サードパーティとして「上海益社公益文化発展センター」をパートナーに迎え、全体的なデザイン設計と日常的な運営管理を委託することで、施設の専門性と持続可能性を確保している。
このような多機関連携の枠組みにより、Lab812は多様なリソースが集積する「ハブ」となった。「812」という番地は、奇しくも8月12日の「国際青少年デー」と一致しており、この空間に独自の文化的アイデンティティをもたらしている。
これは単なる物理的な空間の提供にとどまらず、制度上のイノベーションでもある。静安区はここで、共青団全体で初となる「ユースエコノミー共青団指導委員会(静安寺街道巨富長エリア・ユースエコノミー共青団指導委員会)」を設立し、共青団組織の主導のもと、複数の行政部門が協働し、民間活力が参画する連携メカニズムを構築した。
Lab812の明確なポジショニング
「非営利特化型」、「強力なコンテンツ主導」、「高いインタラクティブ性」の3つのポジショニングを掲げている。出店を希望するブランドオーナーは、光熱費等の実費を負担するだけで、7~20日間のテストマーケティングの機会を獲得できる。この募集が発表されるや否や、若手起業家たちの熱意に火がつき、短期間で20近くのブランドから応募が殺到した。
実証実験:11回のポップアップが紡ぐ若者たちのビジネスストーリー
「ここでは単にモノを売るのではなく、社会実験を行っているのだ」。ケンブリッジ大学の卒業生であり、シルクブランド「絲所」の創業者である彭陽氏は、Lab812における初の「チャレンジャー」の一人だ。これまでは、高額なテナント料やブランドポジショニングの観点から、単独での実店舗展開に踏み切れずにいた。彼女はLab812の空間を小規模な「シルク・エキシビション」に見立て、光と影の演出を用いて素材革新のストーリーを表現した。20日間のテスト出店は、オンライン売上を大幅に伸ばしただけでなく、「中途半端ではなく、輝く存在にならなければ」と、静安区に常設店舗を構える決意を固めるきっかけとなった。
同済大学のポストドクターである王溪氏もまた、ここで「地域とのつながり」を見出した一人だ。彼女が主宰する「LANERS 老虎竈喫珈琲」は、この空間を街の歴史を伝える発信局へと生まれ変わらせた。「あなたが街の風景になる時」というインタラクティブな仕掛けを設置し、ショーウィンドウのカメラを通じて、道行く人々の姿を大型スクリーンに投影している。王溪氏は次のように語る。「好奇心から入店された多くの方々にコーヒーを振る舞いながら、古い建物やこのエリアの街並み更新にまつわるストーリーを語りかけた。Lab812は、ビジネスに人の温もりと歴史の深みをもたらしている」。
現在、Lab812は緑色のロッジ風に様変わりしている。現在の臨時オーナーは「YOTTOY」のポップアップストアだ。
創業者兼CEOの董飛躍氏は、「巨富長」エリアを訪れる若者は、単なる買い物ではなく「ライフスタイルの体験」を求めていると考えている。そのため彼は「巨富長」の街の雰囲気に合わせ、セールなどの販促活動は行わず、ヨガやサイクリングなどのコミュニティイベントを企画した。
1ヶ月以上にわたる実際の運営と顧客のフィードバックに基づき、同社はサブブランド「YOTTOY ACTIVE」をこの地に正式に出店することを決定した。「Lab812が低コストでのテスト環境を提供してくれなければ、このような大胆な試みはできなかったし、出店をこれほど早く決断することもなかった」。
Lab812の運営開始から半年余りで、11のポップアップストアが次々と展開された。無形文化遺産のシルクからサステナブルなフレグランス、サーキュラーエコノミーからスポーツファッションに至るまで、ここはまさに「インスピレーションの実験室」として、ブランドコンセプトとストリートカルチャーとの間に見事な化学反応を起こしている。
支援体制:行政サービスと産学連携による「伴走型サポート」
Lab812の成功は、共青団による単独の取り組みではなく、多様なリソースが結集した「共創」の賜物だ。ここには特別な「アドバイザリーボード」が存在する。静安区共青団委員会と東華大学共青団委員会が共同で立ち上げた「安聚人材(優秀人材結集)」プロジェクトチームだ。応用経済学、デザイン学、人工知能を専攻する6名の学生が、「一日店長」や「ユース・オブザーバー」として運営に参画している。彼らは各店舗に対して専門的なブランド戦略の提案を行うだけでなく、100近くのスモールビジネスを対象とした店舗訪問レポートを作成した。このような「大学のシンクタンク機能+現場での実践」というサイクルにより、学生には実践的トレーニングの場が、ブランドオーナーにはナレッジサポートが提供されている。
Lab812において、静安区共青団委員会は最もアクティブな「コーディネーター」として機能している。ここでは「若手スモールビジネス連盟」を立ち上げ、区の市場監督管理、税務、人材・社会保障、都市管理執行、公安などの行政各部門の実務担当者と連携したサポートチームを結成した。「受動的な窓口対応」から「能動的なアウトリーチ支援」へとシフトしている。市場監督管理部門は画期的な「スモールビジネス開業ガイド」を発行し、税務部門は個別の税制優遇措置に関する解説を提供した。このようなきめ細やかな行政サポートにより、ブランドオーナーは煩雑な手続きから解放され、プロダクトの磨き上げに専念できる。
情熱を持続させるには、ビジネスロジックの裏付けが不可欠だ。区共青団委員会は、「ユースエコノミー・非公開ピッチイベント」を定期開催して投資機関との最適なマッチングを図り、「ユースエコノミー・ガイドブック」を発行して静安寺エリアの客足を裏通りの店舗へと誘導している。さらに、ポッドキャスト番組を配信し、オーナーたちのストーリーをオンラインで広く発信している。
ビジョン:汎用性と再現性を備えた「静安モデル」の構築
半年の運営を経て、Lab812は単なるブランド育成の成果を示すだけでなく、持続可能な若手起業エコシステムを体現している。「メンターシップ・プログラム」を通じて、既存ブランドが新規ブランドを牽引し、オーナー同士が互いを推薦し合う関係性が築かれている。キャラクターIP「蘋果兎」の創業者である樹楊氏は、現在では静安区の若手オーナーの「起業メンター」を務めている。また、ジュエリーブランド「橘芮」は非公開ピッチで投資家の支持を獲得し、市レベルの起業コンテスト「創青春」のステージへとステップアップした。「起業家同士が互いを引き上げ合う」という温かい連帯感により、Lab812は自律循環型のエコシステムとして機能している。
Lab812が静安のユースエコノミーの「バージョン1.0」だとすれば、点を線に、線を面に広げる「バージョン2.0」への進化もすでに動き出しており、ユースエコノミーを「実証フィールド」から「モデルケース」へと飛躍させようとしている。
静安区はまもなく「静安区ユースエコノミー政策策定に関する諮問レポート」を発表し、同時に15項目の「コア施策」を打ち出す予定だ。これらの施策は、人材、コンテスト、資金、実証フィールド、サービスの5つの柱で構成される。例えば、「ヒト」の側面では、「ユース・スモールビジネス・オーナー向けブートキャンプ」や「静英・産業若手人材トレーニングキャンプ」といった段階的プログラム、ならびに「創青春」や「奮闘杯」などの若者向けイノベーション・起業コンテストを基盤として、毎年100名以上の業界中核人材を誘致・育成する。「カネ」の側面では、度小満や区内の金融機関、社会ファンドと連携して専用の金融商品「静安ユース起業ローン」を打ち出し、総額500万元以上の無利子融資枠を設けることで、若者の資金調達コストを確実に低減させる。「モノ」の側面では、Lab812をモデルとして国有資産の施設や商業エリアの裏通りリソースを連動させ、10カ所以上のユースエコノミー「実証フィールド」を継続的に設立し、「ポップアップでのテストマーケティング→街区への本格出店→商業エリアのアップグレード」というインキュベーションモデルを模索する。
巨鹿路のプラタナス並木の下で若者たちのストーリーが次々と生まれ、小さなアイデアがLab812という土壌で芽吹こうとしている。
静安区は、汎用性と再現性を備えた「静安モデル」の構築に尽力し、若者のクリエイティビティと静安区の産業基盤をシンクロさせることで、静安区が全国におけるユースエコノミー・モデルの「定義者」と「ロールモデルの提供者」となることを目指す。